「衆議院比例区」
票伸ばすのは大変
1994(平成6)年3月4日、公職選挙法が改正され、衆議院選挙に小選挙区比例代表並立制が導入されました。
当時の目的として、「二大政党制の実現を理想とした個人名投票の小選挙区制」と「少数政党にも議席を確保できる政党名投票の比例代表制」少々相矛盾した制度を導入し、有権者は2票投票できることになりました。有権者も2票を異なった思想信条に投票することもできます。
そこで、立候補する人は「重複立候補」ができるので、「小選挙区では勝てないが、比例区で救われるので大丈夫」といった声も聞きます。しかし本当にそうでしょうか?比例区で政党が票を獲得し議席を伸ばすのが以下に大変か、を見てみます。
ドント式のおさらい
比例代表の当選者は、衆参いずれの国政選挙でも、得票数に応じて“ドント方式”と呼ばれる計算方法で各党の獲得議席数が決まります。
比例区ではドント方式計算方法だと少数政党が有利と言われているけれど、どうしてかな?
本当にそうか、計算方法で見てみよう。
A 表
A表は、ドント方式を用い当選者を決めるある選挙結果です。
わかりやすくするために、
投票総数:92,020票 当選者数:4人 |
A党は:50,000票 |
B党は:25,020票 |
C党は:17,000票 |
を獲得しました。それをドント方式の計算式に当てはめ、当選者数:4名の「限界値」つまり4人目の得票を割り出し、各党の当選者数がA党:2人・B党:1人・C党1人となりました。
個々での考察は、
A党は92,020票のうち50,000票・54%を獲得し ▇2名 |
B党は92,020票のうち25,020票・27%を獲得し ▇1名 |
C党は92,020票のうち17,000票・18%を獲得し ▇1名 |
であり、C党はわずか18%で、▇1議席獲得になります。
確かに少数政党の方が有利みたいね
2021年衆議院選挙東京比例区から考察
では実際の選挙結果を見てみよう。2021年10月に行われた衆議院選挙東京比例区の結果です。
B 表
政党名 | 獲得票数 | ÷1 | ÷2 | ÷3 | ÷4 | ÷5 | ÷6 | ÷7 | 獲得議席数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自民 | 2,000,084 | 2,000,084 | 1,000,042 | 666,695 | 500,021 | 400,017 | 333,347 | 285,726 | 6 |
立民 | 1,293,281 | 1,293,281 | 646,641 | 431,094 | 323,320 | 258,656 | 215,547 | 184,754 | 4 |
公明 | 715,450 | 715,450 | 357,725 | 238,483 | 178,863 | 143,090 | 119,242 | 102,207 | 2 |
共産 | 670,340 | 670,340 | 335,170 | 223,447 | 167,585 | 134,068 | 111,723 | 95,763 | 2 |
維新 | 858,577 | 858,577 | 429,289 | 286,192 | 214,644 | 171,715 | 143,096 | 122,654 | 2 |
国民 | 306,180 | 306,180 | 153,090 | 102,060 | 76,545 | 61,236 | 51,030 | 43,740 | 0 |
れ新 | 360,387 | 360,387 | 180,194 | 120,129 | 90,097 | 72,077 | 60,065 | 51,484 | 1 |
社民 | 92,995 | 92,995 | 46,498 | 30,998 | 23,249 | 18,599 | 15,499 | 13,285 | 0 |
N党 | 92,353 | 92,353 | 46,177 | 30,784 | 23,088 | 18,471 | 15,392 | 13,193 | 0 |
2021年10月30日投票の衆議院総選挙比例東京ブロックでは総得票数6,446,898票で、うち自民党は2,000,084票(31%)を獲得し6議席獲得しました。
ここで、自民党が、他党の得票が全く同じと仮定してもう1議席(7つめの議席)を獲得するためには、あと何票必要だったかを計算してみます。
限界値(当選最低得票)は立民党4議席目の 323,320票 となりますので、自民党の7議席目の285,726票 がそれを上回らなくてはなりません。これだけの計算では37,594 票上回ればいいということになりますが、ドント式を用いているため同じ票が上位の議席にも振り分けられなくてはなりませんので、「かける7」をして263,158 票以上が必要になります。しかもこの数字は投票に行かなかった人に「自民党」と投票してもらわなくてはなりません。
自民党では東京小選挙区に24人候補者を立てましたので、一人あたり11,000票の比例票の上積み、という非常に難儀な数字となります。
やっぱり、大きな政党が比例区で1議席増やすのは大変ね・・・
次の選挙ではどうなるか
次の衆議院選挙では、比例東京ブロックでは議席が2つ増えて19議席になります。
以下の条件で2議席がどう振り分けられるか、見てみよう。
第49回衆議院選挙と同様の総投票数・政党得票数とする
最近の世論調査を鑑み、維新の得票を総投票数の18%・立憲の得票を15%とする
新規政党は含まない
N党は政女党に変更
C 表
政党名 | 獲得票数 | 得票率 | ÷1 | ÷2 | ÷3 | ÷4 | ÷5 | ÷6 | ÷7 | ÷8 | 獲得議席数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自民 | 2,000,084 | 31.02% | 2,000,084 | 1,000,042 | 666,695 | 500,021 | 400,017 | 333,347 | 285,726 | 250,011 | 6人 |
立民 | 968,336 | 15.02% | 968,336 | 484,168 | 322,779 | 242,084 | 193,667 | 161,389 | 138,334 | 121,042 | 3人 |
維新 | 1,183,522 | 18.36% | 1,183,522 | 591,761 | 394,507 | 295,880 | 236,704 | 197,254 | 169,075 | 147,940 | 4人 |
公明 | 715,450 | 11.10% | 715,450 | 357,725 | 238,483 | 178,863 | 143,090 | 119,242 | 102,207 | 89,431 | 2人 |
共産 | 670,340 | 10.40% | 670,340 | 335,170 | 223,447 | 167,585 | 134,068 | 111,723 | 95,763 | 83,793 | 2人 |
国民 | 306,180 | 4.75% | 306,180 | 153,090 | 102,060 | 76,545 | 61,236 | 51,030 | 43,740 | 38,272 | 1人 |
れ新 | 360,387 | 5.59% | 360,387 | 180,194 | 120,129 | 90,097 | 72,077 | 60,065 | 51,484 | 45,048 | 1人 |
社民 | 92,995 | 1.44% | 92,995 | 46,498 | 30,998 | 23,249 | 18,599 | 15,499 | 13,285 | 11,624 | 0人 |
N党 | 92,353 | 1.43% | 92,353 | 46,177 | 30,784 | 23,088 | 18,471 | 15,392 | 13,193 | 11,544 | 0人 |
※次回衆院選から議席増となる18,19議席目は▇
努力目標
次期衆議院選挙比例東京ブロックでの、各政党の獲得議席を想定し、この得票であった場合、あと1議席・2議席増やす場合は、どの程度の票が必要かを分析してみます。
なお、この分析結果はあくまでも前回選挙結果および現在の政党支持率からの予想想定得票数を用いているので、あくまでも努力目標です。
努力目標(この場合次(々)点をを割り出す計算として、次(々)点票が限界値を上回らなくてはなりませんから、限界値から次(々)点の票を引き、その値を一位から、次(々)点それぞれに加えなくてはなりません。
つまり:=(限界値ー次点票)×次(々)点までの人数
で得られます。
自民が1議席増やすには: | 71,080 票以上 |
自民が2議席増やすには: | 366,961 票以上 |
維新が1議席増やすには: | 想定では増えた議席は維新の4人目に当たりますので0票とでますが、実質134,492 票の上乗せが前提となっています |
維新が2議席増やすには: | 355,058 票以上 |
想定では、東京ブロックの比例票を増やさなくてはなりません。
「増やす」といっても、前回票を前提にしていますので、前回投票しなかった人から、比例の政党票を上積みしなければならないということで、これには相当な努力を要します。
小選挙区の候補者は、比例区も絶対所属政党に入れてもらうようにお願いしよう
まとめ
以上のように、衆議院選挙ブロック比例では少数政党でも政党知名度や党所属候補者の知名度が高ければ、ブロックあたり1~2名の当選は可能です。しかし政党が大きくなるにつれ、ブロック比例の名簿登載者が増えると相対的には多くの人数が当選することは難しくなります。
しかし昨今は少数政党の優位を鑑みてか、特に国政選挙において少数政党の立候補が目立ってきました。
2021年衆議院選挙では
「自由民主党・公明党・立憲民主党・日本共産党・日本維新の会・国民民主党・れいわ新選組・社会民主党・NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で・支持政党なし・新党やまと・政権交代によるコロナ対策強化新党・日本第一党・新党くにもり・愛地球党・日本成功党・改新党・改革未来党・新党日本のこころ」
以上17の政党が候補者を立て、
2022年参議員選挙では、
「自由民主党・立憲民主党・公明党・日本維新の会・日本共産党・国民民主党・れいわ新選組・NHK党・社会民主党・参政党・新党くにもり・幸福実現党・ごぼうの党・維新政党・新風・日本第一党」
以上15の政党が候補者を立てました。
現在でも、NHK党から分裂してできた「みんなでつくる党」や「日本保守党」などが次の国政選挙に候補者を擁立する準備をしています。
次回の国政選挙では、いくつの政党が何人の候補者を立てるのだろう
私の支持する政策を取り上げてくれる政党が出てくれるとうれしいわ